事例・インタビュー

就業規則を一新し、次世代につなげる【株式会社東京サーマル】

企業紹介

社名:株式会社東京サーマル
事業内容:建設業 / 従業員数:44名
代表取締役社長 小田 利隆 さん

担当した専門家

星野 理恵 Rie Hoshino
社会保険労務士事務所Miznale

特定社会保険労務士

本事例の3つのポイント

  • 表面化した社員の不満や課題に対して各種制度を導入
  • 就業規則を一新し、建設業における労働時間の上限規制などに対応
  • 社内DXや採用強化を推進していくための土台作りが大きく前進

解決すべき課題が山積みの状態からスタート

Q.働き方改革関連法が適用されるにあたり、貴社ではどのような対策・対応が必要でしたか。

 正直に言って、変えなければならないことだらけでした。

 当社は創業50年以上にわたり設備改修工事に特化した事業展開を図ってきた建設会社です。中規模でありながら最先端技術を強みに数々のビルを手掛けてきましたが、その一方で、業界全体の課題でもある長時間労働や休日出勤が恒常化していたんです。

 元々、エネルギー関連企業の役員だった私が当社の社長に着任したのは、時間外労働上限規制適用の期限があと1年に迫った2023年4月のことでした。早期の改革に迫られていましたが、課題が山積みで何から手を付けたらよいのか頭を抱えたものです。

 そこで、東京都が主催する働き方改革に関連したセミナーを受講。その中で「専門家派遣」のことを知りました。

 実は、自社の顧問社労士にも相談はしていたのですが、専門領域が異なっていたこともあり思うように取組が進まなかったため、他の専門家にも話を聞いてみようという気持ちで依頼することにしました。

従業員の声を取り入れた勤務制度の見直しを行い、就業規則を一新

Q.専門家とはどのように改革を進めていきましたか。

 働き方改革にあたり、就業規則の改定が喫緊の課題でした。

 東京都の事業を活用し実施した「従業員サーベイ」や1on1の面談を通して、「休めない」「評価や査定の基準を周知してほしい」などの不満が表面化されていたので、まずは当社で従業員の希望を取り入れた就業規則の改正案を作成。その案をもとに、今回担当してくださった専門家の星野先生の助言・提案をいただきながら内容のブラッシュアップを図っていきました。

 具体的には、夜間・土日作業も多い当社のようなケースでは、通常の勤務制度を変形労働時間制に移行することによって残業削減が見込めること、テレワークやワーケーションの規定を設定することで採用面でもアピールにつながること、そのほか休暇や休日制度の見直し、賃上げ、社内DXの推進など様々なご提案をいただき、できることは全て取り入れました。

 就業規則に記載する文面の最終確認にも対応していただきました。

 また、取組に関連した補助金や助成金についてもご案内してくださったおかげで、申請手続きに関しても自社でスムーズに対応することができました。

Q.今回の改革内容を教えてください。

 就業規則の実に8割以上を見直しました。時間外労働の対策として、現場スタッフは1か月単位の変形労働時間制への移行、月の中で業務量が増減する内勤スタッフはコアタイム無しのフレックスタイム制の導入を実施。残業代を見込めなくなった分、賃金のベースアップも行いました。

 有給休暇の消化率が低かったので、取得を義務化し、積立有給(保存休暇)も導入しました。そのほかテレワークやワーケーションに加えて、資格取得支援やメンター制度といった教育体制も強化するなど、あらゆる項目を一新。働きやすさだけではなく、働きがいやエンゲージメントにも着目した取り組みを導入できたと考えています。

Q.就業規則改定後の変化や従業員からの反応についてお聞かせください。

 新しい就業規則についての説明会は事前に実施していたものの、実際に動き出してみてはじめて自分事として捉えられたという従業員が多いように見受けられます。

 新体制に移行して2か月現在の従業員の反応としては、改革を歓迎する従業員もいる一方で、社内DX化を推進したことに戸惑いを感じる従業員も多くいました。

 働き方改革にあたっては業務の効率化が不可欠であること、大企業・中小企業に関わらず世の中のルールに合わせる必要があることを全従業員に周知させながら、1つずつデジタル化に取り組んでいるところです。例えば、作業フローの軽減を目指してこれまでエクセルで管理していた勤怠管理や書類決済、経費精算をそれぞれシステム化、説明会に参加できない従業員向けにオンラインで説明会の配信もしました。

 現在は労務管理のシステムの導入に向けて準備中です。

国籍や性別を問わず多様な人材が活躍できる組織を目指して

Q.今後の方針や取り組みについて教えてください。

 人材不足と言われる中、これまで以上に採用に力を入れていく方針です。採用難が進むであろうこれからの時代は、建設業においても「男性じゃなきゃだめ」「日本人じゃなきゃだめ」といった旧態依然とした考えでは企業が生き残っていくのは難しいでしょう。

 国籍や性別を問わず、全従業員が安心して働くことができる体制を築いていかなければならないと強く考えています。その一歩として、当社では男女問わず育児休暇を取得できる体制や、外国人材へのメンター制度、フォローアップ体制、社宅の整備を行いました。こうした採用や労務まわりの整備についても星野先生からアドバイスをもとに実施したものです。

 その甲斐もあって、この春には新卒男性のほかに当社初となる女性の現場スタッフを2名、その内中国・ミャンマーから3名採用できました。

 当社は現在、平均年齢が40代後半となっておりますので、今後も多様な人材を積極的に採用し、次世代の担い手として手厚い指導のもと育成していきたいと考えています。いずれ帰国する外国人材にとっても、当社で得た技術を活かして自国で活躍していただけたら嬉しいですね。

 こうした未来を実現するためにも、私たちの仕事の面白さや魅力、そして仕事そのものがSDGsにつながる社会貢献度の高い仕事であることを、HPやSNSを通して積極的に発信していく意向です。

Q.「専門家派遣」の利用を検討中の企業へメッセージをお願いします。

 気軽な気持ちで利用した「専門家派遣」でしたが、まさかここまで親身になって取り組んでいただけるとは思ってもみませんでした。

 どの公的支援をどのように使えばいいのかわからないことも多いと思いますが、当社の場合は星野先生から「この制度を利用できますよ」「この支援金が対象になるかもしれません」と教えていただいたおかげで、様々な支援も受けることができました。

 利用してマイナスになることはないので、まずは試しに利用してみる価値は大いにあると思いますね。

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