従業員主体の「エンジョイワークチーム」と専門家派遣で働きやすさと企業価値の創造を両立【株式会社成佳屋】

企業紹介
社名:株式会社成佳屋
事業内容:内装資材卸売業/従業員数: 30名
代表取締役 日暮政人さん

馬場 一成 Kazushige Baba
ばば社労士事務所 代表
特定社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士
相談前の課題
- 新卒採用強化のため初任給引き上げを検討、現行給与と能力とのバランス調整が課題に
- 従業員の働き方に対する意識が多様化し、休暇制度の見直しが必要となった
- 人事労務に関する最新の動向や他社事例の情報が不足していた
制度活用のきっかけ
- 採用競争力及び定着を向上させるため、速やかに給与テーブルを検討する必要があった
- 従業員の声を制度に反映させるための正しい進め方を模索していた
- 専門的な知見と他社事例を参考にした効果的な制度改善を目指していた
相談後の成果
- 従業員主体の委員会である「エンジョイワークチーム」がオフィスカジュアルの導入を実現
- 時間単位で取得できる有給休暇、生理休暇の有給化など、従業員のニーズに応じた休暇制度を整備
- 育児・介護休業法改正への対応と、従業員への適切な情報提供体制を構築
「豊かな生活空間づくり」と「快適な職場環境づくり」の実現へむけて
Q.はじめに事業内容を教えてください。

当社は内装資材の卸売業として、主にリフォーム工事に必要な商材を、工事に携わる職人の方々向けに販売しています。「流通の架け橋」となることで、メーカー様と内装工事店様をつなぐ結節点の役割をになっています。同業者も同じ商品を扱うため商品だけで差別化することは困難です。そこで私たちは「人」を重視し、レスポンスの良さや自社配送の柔軟性など、サービス対応を通して「人との絆作り」に注力してきました。従業員は30名で、営業や配送に加えて社内にいる営業事務員のサポートも重要な組織の要(かなめ)になっています。
Q.なぜ働き方改革に取り組むようになったのでしょうか。
当初、新卒社員を継続的に採用したいと考え、そのためには他社や他の業界と比べて見劣りしないように初任給を引き上げる必要を感じていました。そのため既存社員との給与バランスを考え抜本的な給与テーブルの見直し、賃金の底上げから取り組もうと考えました。また、従業員の働き方に対する意識が多様化し、休暇制度の充実など職場環境の改善が必要だと感じていたのも事実です。「人」による差別化を目指す当社にとって、従業員が働きやすい環境を整えることは、お客様に質の高いサービスを提供するうえでも重要な課題だと捉えていたからです。
従業員が主体の委員会設立と専門家派遣で働き方改革を推進
Q.貴社での具体的な取り組みについて教えてください。

毎年行っている経営方針会議で、従業員がかかわって改革を推進する4つの委員会の立ち上げを発表しました。その1つが働き方改革委員会で、後に従業員によって「エンジョイワークチーム」と名付けられました。これは昨今、土曜日を完全休日にした影響により、それまで土曜日に不定期で開催していた全社ミーティングを実施できなくなった影響で、改めて従業員との接点を確保する必要があったためです。
委員会のリーダーは私が指名しましたが、他のメンバーはリーダーの声がけに応えて自発的に集まりました 。最初は私も参加していましたが、従業員が主体となった本音ベースでの議論を促すため、徐々に参加頻度を調整しました。
Q.委員会の発足と同じ頃から専門家派遣を利用されましたが、これはなぜですか。
これまで、顧問の社労士には給与計算や社会保険の事務手続きのみをお願いしていました。しかし、法改正への対応や就業規則の適切な更新など、手がつけられていない部分もあり、そこに課題を感じていたのです。そんな時、取引のある金融機関から、社会保険労務士を派遣する東京都の事業があると教えてもらい、すぐに申し込みを決めました。
エンジョイワークチームからは、様々な要望や提言が寄せられることが予想されたため、法的な観点から適切にアドバイスしていただける専門家がいてくれれば心強いだろうと考えたからです。
専門家のアドバイスと従業員の自由な発想で制度改善が実現
Q.実際にどのような支援、アドバイスを受けましたか。
面談に来てくれた馬場先生は、かつてハウスメーカーでの営業経験があり、建築業界の実情を深く理解されていました。そのため最新の法改正情報はもちろん、同じ業界の他社の事例を教えていただき、当社の希望に合わせたアドバイスがどれも実践的でした。
特に印象的だったのは、従業員から要望が出た「急な病欠時の有給事後申請」について、法的な観点から実現可能性を検討していただいたことです。エンジョイワークチームの議論では、急な病欠に限らず、生理休暇の取得についても「理由を明かしたくない」という女性従業員の声に応えるため、有給休暇への事後振替も可能という解決策を提示していただきました。
Q.エンジョイワークチームからはどのような成果が生まれましたか。
最初に出てきた要望が「制服廃止」でした。私は制服があった方が統一感もあり良いと思っていたのですが、「働きやすい職場づくり」をテーマに話し合いを始めた際、女性従業員が真っ先に挙げたのがこの要望でした。自分らしい服装で働くことへの強い希望があり、オフィスカジュアル導入に向けた具体的な検討が始まりました。
時間単位で有給が取得できるようになったことも 、エンジョイワークチームの要望がきっかけでした。馬場先生から他社の先進的な事例として教えていただき、就業規則にも表記することができました。
従業員の成長と会社の価値創造を目指して
Q.支援を受けた結果、どのような変化がありましたか。

専門家のアドバイスがあることで、私自身が不安や迷いなく改革を決意できたことが直接的な効果です。加えて、従業員の意識にも大きな変化が見られました。委員会が1年間の成果を発表する機会では、「休暇を取る権利を主張する一方で、その分の業務を担う同僚への配慮も必要」と意見を述べてくれました。実際に制服廃止を決める過程では、委員会メンバーが他の従業員から丁寧にヒアリングしていました。最初のヒアリングが不十分で一部から懸念の声が出た際に「しっかりと意見を聞き、対話をするプロセスが必要」だと自ら学び、最終的に全社での合意形成を実現しました。
従業員の成長を感じることができたのは、経営者としても喜ばしいことです。現在は離職者もほとんどおらず、従業員が楽しそうに仕事をしている雰囲気を感じています。育休や介護休業などの制度が整備され、従業員からの質問に自信を持って答えられるようになったのも大きな変化です。
Q.今後の展望について教えてください。
現在も委員会活動は継続しており、今年度のエンジョイワークチームのテーマは「会社の価値を見つけて内外にアピールする」ことです。働き方改革の本来の目的は、従業員が当社の価値を見つけ、それを磨き上げることで、お客様との関係づくりにも良い影響をもたらすことだと考えています。
働き方だけを変えるのではなく、価値を高めて、顧客に届けるという当社が目指す差別化にもつながる話です。引き続き、従業員一人ひとりが当社の価値を理解し、それを体現できるような組織を目指します。
Q.「専門家派遣」の利用を検討中の企業へメッセージをお願いします。
専門家の先生に話を聞いていただくだけでも、経営者として心が整います。メンターのような存在として、経営者と従業員の視点の違いをうまく言語化してもらえるように感じました。
課題から目を背けていても仕方がありません。人材が重要な資産である以上、従業員の声にしっかりと向き合う必要があります。専門家派遣は、自社だけでは気づきにくい課題を発見し、解決に導くための有効な手段です。ぜひ積極的に活用されることをおすすめします。