(住設)業界の常識から脱却へ!完全週休2日制を実現した働き方改革【株式会社カマスズ】

企業紹介
株式会社カマスズ
事業内容: 住宅設備機器卸売業・リフォーム工事 / 従業員数: 14名
代表取締役社長 鈴木一郎さん

馬場 一成 Kazushige Baba
ばば社労士事務所 代表
特定社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士
相談前の課題
- 就業規則が長年改定されておらず、現行法との適合性に不安があった
- 年間休日が111日と他業種に比べて少なく、採用における競争力に課題があった
- 従業員に働き方改革への意識が浸透しておらず、個人の意識改革が必要だった
制度活用のきっかけ
- 他業種との人材獲得競争で勝ち抜くため、年間休日120日以上の実現が急務だった
- 従業員の家族の介護問題が顕在化する前に、制度整備を行いたいと考えた
- 以前から関係のあった専門家から本事業の存在を教えてもらった
相談後の成果
- 年間休日を120日へ増やし、完全週休2日制を実現した
- 分業制の推進により労働時間削減と業務の質向上を同時に達成した
- 平日の休暇を活用した従業員のワークライフバランスが向上した
- 固定残業代の計算見直しにより最低賃金違反リスクを事前に回避できた
長年続いてきた業界や社内の“属人的”な働き方を改革したい
Q.事業内容を教えてください。

当社はシステムバスやシステムキッチン、トイレなどの住宅設備機器の販売や設置を中心に、近年はリフォーム工事にも力を入れています。 社名のカマスズは、風呂釜の製造にルーツがあったと聞いています。時代の変化とともに、瞬間湯沸かし器が普及したことを受けて、給湯器メーカーの代理店業務へと転換していきました。現在の従業員数は14名です。
Q.「働き方改革」に取り組むまでの経緯をお聞かせください。
リフォーム業はお客様の都合に合わせる必要があり、業態として長時間労働になる傾向にあります。当社も時間外労働が多いのは当たり前という状況が長年続いていたように思います。しかし「業界では当たり前だから」という前提に立ったままでは、やがて従業員が疲弊し、離職してしまうのではないかという危機感を持つようになりました。
これまでの年間休日は111日で、これも同じ業界内で比べれば多いと言える水準でした。しかし人手不足が深刻化する中、他の業界と比べても魅力的に映る会社でなければなりません。最低でも120日以上の休日を求人票に明記できないと、就職先として検討の土台にさえ残れなくなるのではないかと考えるようになりました。
Q.休日が少なく、また労働時間が長くなっていたのはなぜだったのでしょう。
営業から施工管理まで1名で担当する働き方が定着しており、これも業界の常識となっていました。しかし、お客様や取引先などの要望、連絡に対して常に1名の従業員が専属的に対応する働き方では、時間外労働の削減は難しく、働き方改革にも対応できません。
そこで5年ほど前から分業制を導入しました。現在では営業3名、施工管理2名と役割を分けて、それぞれが専門性を活かして業務を進める体制にしています。ただ、古いやり方が染みついているせいか、つい管轄外の業務にも手を出してしまいがちなので、今も意識改革は進行中の課題となっています。
法改正に対応した就業規則の改定と業界標準を上回る休日付与
Q.今回なぜ専門家派遣を利用しようと思ったのでしょうか。

以前から東京都の専門家派遣事業の存在は知っていましたが、過年度から進めている働き方改革をさらに継続したい、加速させたいと考えたためです。特に2024年問題や育児・介護休業法などの法改正などにも適切に対応する必要がありました。また、当社は50代の従業員が中心で年齢層が高いため、今後数年以内に家族介護の問題が現実化する可能性もありました。
加えて、現従業員のためにも、新規採用を増やすためにも休日を拡充したいと考えていたので、長年手がつけられないままだった就業規則の改定にも取り組むつもりでした。それには、やはり専門家のアドバイスが不可欠だろうと考えた次第です。
Q.どのような支援を受けたか、具体的に教えてください。
合計5回の専門家派遣による支援を受けました。まず初めに、現在の就業規則が法律に適合しているかをチェックしていただき、問題のある箇所を一つひとつ丁寧に改善していきました。特に時間外労働の規定について、変形労働時間制の記載が古い法律に基づいていた点があったため、現行法に適応した記載に修正する必要がありました。
リフォーム業では個人宅に伺うことが多いため、土曜日の出勤は避けられません。そこで完全週休2日制を実現するため、土曜日に出勤した従業員は、翌週の水曜日を休みとする仕組みを導入し、1週間に必ず2日の休みが確保できるように改めました。これによって年間休日を111日から120日まで増やすことができました。ただ、休日数を増やすと労働時間単価が上がるため、固定残業代の計算に影響が出ることが判明しました。ここでもし専門家のアドバイスがなければ、固定残業代の金額を再計算する際に、従業員の同意なしに基本給を減額するという「悪意はないけれども違法な処理」を行ってしまった可能性は否定できません。こうした事態を未然に回避できたのは、大きかったと思います。
制度を整えたことで従業員の意識にも変化が現れた
Q.支援を受けた結果、どのような変化がありましたか。
年間休日が増えたことは、従業員から好評です。また月1回程度、土曜日出勤することにともなって水曜日に休みが発生することには当初戸惑いもあったようですが、混雑を避けて病院に行ったり、美術館に出かけたりと有効活用されています。
分業制も少しずつ促進されており、出勤しない従業員の業務を他の人がカバーする体制が定着し、属人化の解消が進んでいます。以前は自力でなんとかしていた業務も「他の従業員とシェアすることが前提」となり、働き方そのものが変わりつつあるようです。
就業規則についても、毎年の法改正に対応して定期的に見直し、労働基準監督署への届出も年に一度必ず行うようになりました。長年放置していた時期と比べると、法令順守を徹底できているという安心感、満足感があります。
Q.エンゲージメントサーベイの結果はいかがでしたか。
サーベイの結果は、私が感じていた課題と概ね一致していました。従業員も分業制の必要性は理解しており、冷静に会社の状況を見てくれていることがわかりました。一方で、仕事量の多さや属人化の問題が残っていること、家族介護への不安が少しずつ顕在化していることも明確になり、継続的に取り組むべき優先課題が可視化されたように感じています。
地域密着型事業の基盤として働き方改革にゴールはない
Q.今後の展望について教えてください。

当社は練馬区を中心とした地域密着型の事業を展開しており、お客様が困った時に真っ先に思い出していただけるような信頼関係の構築を目指しています。それを実現するには従業員一人ひとりが安心して長く働ける職場環境の整備が不可欠です。働き方改革は、顧客サービス向上の基盤となる取り組みなので、今後もよりよい環境整備に努力し続けたいと思います。
Q.「専門家派遣」の利用を検討中の企業へメッセージをお願いします。
まずは一度利用してみることをお勧めします。プロの専門家に相談することで、課題の整理から解決策の提案まで確実かつ効率的に進められます。特に就業規則や労働時間管理などの法的問題は、専門知識がないと正しい判断が難しいものです。当社も専門家の支援により法的リスクを回避し、時代に合った職場環境を整備できました。
こうした「当たり前」のことを真摯に実行することが、従業員の安心と企業成長の両立につながるものと考えています。