事例・インタビュー

自社に合った就業規則の策定と創業メンバーの意識改革を成長の推進力に
【アサイ防水株式会社】

企業紹介

社名:アサイ防水株式会社
事業内容:建設業 / 従業員数:7️名(役員含む)
代表取締役 浅井 豊さん
総務担当取締役 浅井 由さん

担当した専門家

林 弘嗣 Hirotsugu Hayashi
林社会保険労務士事務所 行政書士事務所

社会保険労務士、行政書士

本事例の3つのポイント

  • 組織拡大を図るにあたり、就業規則を一から見直し新たに策定
  • 人材採用・定着を目指し、介護・育児休業制度や特別休暇制度を導入
  • 繰り返し発信することで、創業メンバーの働き方に対する意識改革が前進

今後の採用活動を見据えて、就業規則を一から見直し

Q.会社のことを教えてください。

浅井
豊さん
(以下、
豊さん)

 主に戸建住宅の屋上やベランダの防水工事、外壁シーリング工事を行っている防水施工会社です。当社を設立する前は一人親方として個人で工事を請け負っていましたが、同じように一人親方として活動していた前職の同僚3名が集結することになり、2016年に法人化したのが当社の始まりです。 現在の従業員は、その創業メンバー3名と外国人技能実習生1名、特定技能1名に加えて、事務全般を担う妻の浅井由と私の計7名で運営しています。

Q.「働き方改革」に取組むようになったきっかけはなんですか。

豊さん

 高卒採用への興味がきっかけでした。当社では経営方針を従業員みんなで決めていますが、今後の方向性を話し合っていた時に、「そろそろ組織拡大を図るべきではないか」という意見が出たのも従業員の一人からでした。 そのためにも高校生の新卒採用をしようという話になったのですが、創業メンバーはみんな顔見知りだったこともあり、就業規則についてはそれまで意識していなかったのです。加えて、元々一人親方だった創業メンバーたちは「雇われている」というよりも「仕事を請け負っている」という意識が強く、労働日数や時間に対して無頓着でした。 そのため、まずは今まで曖昧だった部分も含め就業規則を策定するとともに、高校生のみならず多くの求職者に選ばれるような働きやすい組織を目指して「働き方改革」に取り組むことにしました。

給与規定から身だしなみ規則まで、自社に合った就業規則を策定

Q.なぜ専門家の支援を受けたいと思ったのですか。

浅井
由さん
(以下、
由さん)

 外国人技能実習生を受け入れる際に作った簡単な就業規則があったので、その内容がきちんと法律に則っているかを検証していただきたかったこと。そして、当社に合った就業規則をご提案いただきたかったというのが主な理由です。 また、採用している変形時間労働制は当社に合っているのか、従業員が各自で記載する手書き出勤簿は労務管理の面で法的に問題はないのかということも、以前から不安に思っていたので明確にしたいと思っていました。

Q.専門家とはどのように進めていきましたか。

由さん

 まずは給与規定や労働時間、有給休暇取得率の現状を踏まえながら課題を洗い出しつつ、改善案をご提示いただきました。その上で、一般的な就業規則や同業他社の事例、専門家として派遣していただいた林先生のアドバイスをもとに「これはいる、いらない」と項目を取捨選択していきました。 私も代表も労務の専門知識に乏しく、法律と規則を結びつけながら一つひとつを理解していくのが大変でしたが、林先生が細かく教えてくださったので、しっかりと検討した上で当社に合った就業規則を作ることができました。

豊さん

 懸念事項だった変形時間労働制や手書き出勤簿は問題ないことがわかりましたので、労働時間制度はこのままとして就業規則を全体的に見直しました。 具体的には、給与・旅費規定の策定、介護・育児休業制度の導入、身だしなみ規則と運転者の服務規定などを策定。また、外国人技能実習生の部屋を当社が借りていたので、寄宿舎規定も盛り込みました。さらに、これまでは特別休暇を設けていませんでしたが、林先生からのアドバイスをもとに新設しました。

由さん

 高卒求人の受付開始が迫っており時間に余裕がない中での取組でしたが、無事に3か月ほどで完成できたのも林先生のおかげです。

Q.就業規則を策定するにあたり特に大変だった項目はありますか。

豊さん

 身だしなみ規則です。今は個人の自由が尊重される風潮があるので、規則自体を設けるかどうかも悩みました。 その一方で、私たちの仕事は個人宅で作業を行うことがほとんどなので、お客様によい印象を持ってもらうためにも身だしなみを整えることは非常に大切なことです。これから入社する人たちにもこの意識をきちんと持ってほしいという想いから項目を追加することにしました。 ところが、大変だったのはここからなんです。というのも、創業メンバーの中で「絶対にヒゲを剃りたくない」という者がおりまして(笑)。後から入社した従業員と不公平感が出ることは絶対に避けなければならない。しかし、彼は頑として剃らない。この状況に頭を抱えました。そこで林先生に相談したところ、「ヒゲ禁止」などの禁止事項をはっきりと明言するのではなく、意味に余白を持たせること。さらに念を入れて「社長の判断に委ねる」という一文を付け加えてみてはどうかとご提案いただき、無事に就業規則として盛り込むことができました。

労働時間や休暇に無頓着だった創業メンバーたちの意識が徐々に変化

Q.就業規則策定後の変化や創業メンバーの反応についてお聞かせください。

豊さん

 中には、「就業規則なんて設けたら、ルールでがんじがらめになるんじゃないか」「自由にやりたいからここにいるのに」という声もありました。その反面、組織を拡大したいという想いは全員一致していたので、これから人数を増やしていくためには必要なことであると同時に、後進のためにも自分たちの働き方を変えていかなければならないということを、時間をかけて何度も説明しました。

由さん

 その甲斐もあってか、そんな彼らも最近は少しずつ意識が変わってきたように感じています。出勤簿もきちんと書いてくれるようになりましたし、有給休暇も積極的に取ってくれるようになりました。個人的にも規定があることで、従業員から質問があった時にも自信を持って説明できるようになれたと感じています。

Q.今後の方針や取組みについて教えてください。

豊さん

 これまでは前職の住宅メーカーからの依頼が100%でしたが、今後は他の住宅メーカーや個人のお客様からも受注していきたいと考えています。現在、順調に取引先を拡大しているところです。 ゆくゆくは、従業員それぞれの「得意」を活かして防水施工以外の工事も手掛けていきたいです。そのためにも、働きやすい環境を整えて新たな人材を迎え、組織体制の拡大と強化を図っていく方針です。

Q.「専門家派遣」の利用を検討中の企業へメッセージをお願いします。

由さん

 正直にお話しすると、行政の支援制度には面倒くさいイメージを持っていました。申込みの段階で色んな書類が必要だったり、手続きのフローが煩雑だったり。 ところが、特に揃える書類もなく、申込みフォームからいくつかの内容を入力したら申込みが完了し、かえって驚いたほどです。企業にとってメリットしかないので、気軽に申し込んでみてほしいですね。